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つぶやきといふ名のぼやき
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「あんたの好みって本屋の優助さんでせう」
ずばり云ひ当てられて、「なんでわかつちやつたんだらう」と我ながら不思議でならなかつた。
そして、同時に「ああ、さうか、やつがれは本屋の優助さんみたやうな人が好きなんだなあ」と妙に腑に落ちた気がした。

本屋の優助さんといふのはコマーシャルの登場人物だ。パンダの着ぐるみなので「人物」ではなくて「熊物」だらうか。
いつも一生懸命本棚の整理をしてゐるのだが、客に本を荒らされてがつくりする、といふ内容である。客は大挙して押し寄せてくるペンギン。背の高い本棚を前に脚立の上で奮闘する優助さんを尻目に好き放題勝手放題に平積みになつた本を手(翼か)に取り、元あつた場所とは全然ちがふところへおいていつてしまふペンギンは、困つたことになぜだかかはいい。
だが、そんなペンギンの横暴ぶりにがつくりと肩を落とす優助さんがまたいいんだな。

コマーシャルにはもう一ヴァージョンあつて、いつものやうに一生懸命優助さんが本棚の整理をしてゐると、今日にかぎつて客が来ない。きれいに整理し終へた輝く本棚を前に、優助さんが満足げに笑ふ、といふものである。
「満足げに笑ふ」といつたつてパンダの着ぐるみだから実際に笑つてゐるわけではないのだが、そのやうすがいかにも笑つてゐるやうなのである。みづから為したことを誇るでもなく驕るでもなく、ただただ一仕事終へた後の充実した気分に満ちてゐるといつた感じが好もしいのだ。

「そんなコマーシャル、あつたつけ?」
はい。ございません。これは全部やつがれの夢である。
「本屋の優助さんみたやうな人が好みなんでせう」と人から云はれたのも夢なら、本屋の優助さんのコマーシャルも夢で見たものなのだ。
しかしいつたい何に関するコマーシャルなんだか。公共広告機構か? さもありなんさもさうず。
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